ミネラルタウン**カイ×クレア

蟻が十匹


「蟻が十匹」
「ありがとう」
「言うなよ」
「つまらない」
「言うなよ」
「全然涼しくならないね」
「当たり前だろ。そもそもこれで涼しくなろうなんて間違ってる。言葉が現実の物に干渉できるか」
「カイ」
「なんだ?」
「愛してる」
「……本気?」
「本気だと思う?」
「嘘だと思う」
「正解」
「……」
「ねえさっき驚いたでしょ?」
「嘘であろうとなかろうといきなり愛の告白をするやつに驚かない奴がいたら見てみたいな」
「簡単すぎるくらいじゃない」
「なにが?」
「現実に干渉するの」
「なんだその話か。……あ」
「なに?」
「もし言葉が現実に干渉できるのなら、さっきの言葉は簡単に本当になったりして」
「……さあね。そんなの知らないわ」
「否定しないんだ」
「そのかわり指定もしないけど」
「否定しないだけで十分だ。クレアは今のところ俺をどう思ってるんだ?」
「知り合い」
「……せめて友達とか親友扱いしてくれよ」
「嫌。人間関係って所詮日頃の行いしだいなのよ? がんばってちょうだい」
「精進します」
「よろしい。それよりなんか涼しくなりそうなこと言ってよ」
「……そうだなあ。じゃあ――」


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