ミネラルタウン**ドクター×クレア

ノド飴


「はい終わり」
 ドクターがそういうとクレアは悲しそうな顔を見せた。
 診察の結果を口で伝える。
 それでも彼女の顔は晴れない。
「健康なことがそんなに不満?」
「もう終わりですか」
「終わりだよ」
 彼女のカルテをしまう。それには一つの病気も怪我も記されていない。
 ドクターは机に向かうと、クレアが診察にくる前に中断した仕事を再開する。
 ふと横をみると、クレアがまだそこにいた。
「薬、処方してください」
 クレアが言う。
「君は健康だろう」
「飲みませんよ。持っているだけでいいんです」
 あなたがくれたものを、と彼女は呟く。
 ドクターはそれを聞こえなかったフリをした。
「分かってるじゃないか。健康な時に薬は渡せない」
 クレアは不服そうな顔をする。
 時計を見ると、そろそろ通院客がやってくる時間だった。
 ドクターは軽く息をつくと、机の上にある缶に手を伸ばす。
 その缶の中にあるのは、よくお店にある、子供の機嫌をとる為の。
「クレアくん」
 彼女の手を取ると、その上に一つの包みを落とした。
「これで十分だろう」
 ドクターはそういうと、仕事にとりかかる。
 クレアはうれしそうにそれをきゅっと握ると、頭を下げた。


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